『七月の炭酸水』

うどんが好きな、場末人の生存と残像。

翻訳について

Don't Be afraid. Be focused.

Be determined. Be hopeful.

 

これは今週のジャパンタイムズSTで紹介されていた
ミシェル・オバマの言葉だ。
STの訳では、
「恐れないで。集中して。決心して。希望を抱いて。」
という訳だった。
でも、元翻訳家として、自分の感性としては違和感を
覚えた。
Be determined.→「決心して」というのは確かに正確だ。
だが、この文章というかコトバは「不安を持っている人」に対して『そっと(勇気付けて)背中を押してあげるような』コトバだというニュアンスで私の感性では受け取った。
この名言の前後文脈はわからないのでなんとも言えないが。

とすると上記のBe determinedの次の訳「希望を抱いて。」
ということを考えるとなんか「決心して」よりうまい訳し方ないかなあ。なんて考えてしまう。
理由は「そっと背中を押してあげる励まし」ようなニュアンスで私の感性は受け取ったので、「集中して」の後にさらに「決心して」はいささか「重い」帰って「重圧」に感じるからだ。(あくまで個人の感性)

そこで下記投稿の英文を「私の感性」で訳すならば、一語だけ変える。
「決心して」を「しっかり歩いて」にしちゃう。
全体を書くと、
青柳:「恐れないで。集中して。しっかり歩いて。希望を抱いて。」
比較する
JapanTimesST:「恐れないで。集中して。決心して。希望を抱いて。」

どっちの訳が良いのだろうか。というより、俺の訳(?)は意訳しすぎで、自分が英文を読んで。determined は重いなあ。
と思ったから脳内変換しただけなので訳とは言えないかもしれない。意訳しすぎというか勝手に創作しちゃってるし...
ただ自分が翻訳家特権として、自分のしっくりくる,かっこいい日本語で表現するなら「決心して(在る)」より「しっかり歩いて」になった。

ここまで「Be determined」たった一語について日本語で表現するなら何がいいかなあ。。。「在る」ということは存在の在り方とも取れるし、それを言い訳に....う〜〜ん。と
頭を悩ませるのも、翻訳or英文解釈の楽しいところ。

いいか悪いかとか、適切か不適切か、誤訳かどうか
これが「訳す」と言えるか。
適切な「翻訳行為」かというのは読者が判断するけど

翻訳に興味がある人なら、
たった一語でも、「これを自分の翻訳文体と文脈と合わせてどう”日本語”で表現するか」
という逡巡は誰しもあるんじゃないかと思って書いてみました。まとまりない文章ですみません。

加藤典洋 高橋源一郎『吉本隆明がぼくたちに遺したもの』

 

 

俺が明治学院いた時、加藤典洋さんまだ早稲田にいってなかったから、ちょっと授業に潜ったこともある。確か、俺が3年の時に後任として高橋源一郎が明学に着任したから、この二人のこの本を借りて読んだ。最近、加藤典洋も丁寧に読み直している。こういう時、ほんとに明治学院行ってよかったなと感じる。今まで、吉本隆明さんって全然知らんかったから、スゲー人やったんだったんだなとか思ってまた世界が広がった。

 

言語表現法講義 (岩波テキストブックス)

言語表現法講義 (岩波テキストブックス)

 

 ↑明治学院での講義を本にしたもの。下記は副読本として指定された本

 

高校生のための批評入門 (ちくま学芸文庫)

高校生のための批評入門 (ちくま学芸文庫)

 

 

 

エロスの漫画家「山本直樹」について-ユリイカ 2018年9月臨時増刊号 総特集◎山本直樹

 

 

ユリイカ」でまさかの山本直樹
あくまで山本直樹にはまっている訳ではない個人の感想だが、この人のエロスに触れるとロリコンになっちゃいそうで怖い...それぐらいエロい。

 

でも、それはそれで真面目に考えればエロスを表現することは天才的とも言える。対談でもそっち系の会田誠と語ってるからすごい(ぶっちゃけ会田もロリコンだと思う)

 

ロリコン」も趣味趣向・セクシュアリティだからいい悪いではないと思う。

もちろん現実的に犯罪はいけないけどね。

 

最後に、不適切なセクシュアリティの当否(ペドフィリアとか児童ポルノとかの文脈)で書いた訳ではないので留意されたし。

 

芸術的な文脈で感想を書いている。

 

「告白ニート」ーーあるいは「深海からの光」(スパンクル『深海』)

 

いたい いたい いたい いたい

閉じ込めた 想いが胸さす

ああ、いたい いたい いたい いたい

 

話では、とどかないから 

諦めた想いが 

胸刺す

 

話では、とどかないから

諦めながら 恋してる

 

教室の真ん中には

あなたの笑顔こぼれてる

 

おはようさえも

言えなくて うつむいて

すれちがう

 

こわい こわい こわい こわい

こんな痛みは知らなかった

 

こわい こわい こわい こわい

こんな痛みは知らなかった

あなたのせいだ  私のせいだ

 

いつだって あなたの横で

太陽の笑顔 私なんてとても叶わない

 

告白したら 嫌われる

みつめてるだけでいい

 

いたい いたい いたい いたい

閉じ込めた 想いが胸さす

 

いたい いたい いたい いたい

閉じ込めた 想いが胸さす

 

私のせいだ

 

明日の天気の予報は雨

もし、晴れたら 伝えよう

そういって 傘を用意する 弱虫

 

ああ、いたい いたい いたい いたい

閉じ込めた 想いが胸さす

 

いたい いたい いたい いたい

閉じ込めた 想いが胸さす

 

こわい こわい こわい こわい

こんな痛みは知らなかった

 

こわい こわい こわい こわい

こんな痛みは知らなかった

 

あなたのせいだ

私のせいだ

  

 


スパンクル「深海」PV

 

 

文学・小さき存在の声のほうへ ーー翁長雄志さん 「オキナワ 終わらぬ戦争(コレクション 戦争×文学)」

news.yahoo.co.jp

今日の新聞で翁長知事の訃報をみた。
新聞を2誌、駅のキオスクで買って熟読した。
(TheJapanTimesと朝日新聞)

 

最後まで闘い抜き、小さき者たちの歴史を代弁した人の存在のともしびが消えた。

 

平熱の戦争。

 

悲しみの雨の連鎖はいつ止まるのか?(いや、昔から人間の業ではないか)

勝てば官軍なのか?(比喩的に殺されていった存在/存在者たちのゆくえは?)

私たちは、本当に「公共性」を真摯に考えられるのか?

(主権を持つ日本国民として、沖縄の基地負担を日本国民が真摯に考えられているのか)

心静かに私はそんなことを考えた。

私は、ことばにこだわる人間として、文学を読んで受け取ったものから、自分のコトバで考える人としてこの本を図書館で借りた。夏期休暇に読みたい。

私は、Political realism,International affairs,National Security よりも、

自分らしく、地べたの声に耳を澄ませたくなったのだ。

オキナワ 終わらぬ戦争 (コレクション 戦争×文学)

オキナワ 終わらぬ戦争 (コレクション 戦争×文学)

 
はじめての沖縄 (よりみちパン! セ)

はじめての沖縄 (よりみちパン! セ)

 

 

花や何 ひとの涙のしずくに洗われて 咲きいづるかな

 

神谷美恵子『生きがいについて』 2018年5月 (100分 de 名著)

神谷美恵子『生きがいについて』 2018年5月 (100分 de 名著)

 

100分で名著。5月から始まるのは、『生きがいについて』
この本は私にとって、すごく意味のある本。
端的に言えば、うつ病になって人生で一番辛い時期
つどつど、自殺を踏みとどまり、救ってくれたのは、
神谷美恵子の『生きがいについて』だったからだ。

また、『生きがいについて』を解説している若松英輔さんにも、
興味が湧いた。この人は、100分で名著。石牟礼道子の『苦海浄土』の時も
解説していた人だからだ。

最後に、私にとって、神谷美恵子石牟礼道子はとても重要な作家である。
他にも、梅崎春生など、挙げればキリがないように
私の人生航路の中で出会ってきた、印象深い重要な作家はたくさんいる。
しかし、特に石牟礼さんの文学は、思想的な射程もある文学なので、
一度はとことんテクストと向き合ってみたい。

 

現代思想 2018年5月増刊号 総特集◎石牟礼道子

現代思想 2018年5月増刊号 総特集◎石牟礼道子

 

 

プラスチック・メトロ

数字と矢印と機械と沈黙の地下道を行く
同じところをぐるぐる回る男の横を通り過ぎ
口の中で異物を転がす


プラスチックをしゃぶり続ける
すれ違った女は壊れていた
化学物質の花の匂い
目の前を流れていく男女男男女男女
誰かいる たくさんいる 誰もいない

 

誰かが名前を叫んだようで
いつもそうして振り返りまた歩き出す
誰かが腕をつかんだようで
いつもそうして振り返りまた歩き出す

もしも触れれば跳ね飛ばされる
ぎりぎりのところに立っている
もしも触れれば跳ね飛ばされる
ぎりぎりのところに立っている

 

ーー「浪費せよ、消費せよ」 「金を、労力を、命を、時間を、情報を」

 

異議を唱える前にとりあえずの睡眠と食事
それでまたなんだか忘れちゃってまあいいか
上がっても上がっても地下道
矢印の果てには真っ黒い海
覗き込んで引き返す
どこかで道を間違えた

 

「どうしようもない」と聞こえたが誰の声かわからない
まだ流れていく男女男男女男女

 

誰かが名前を叫んだようで
いつもそうして振り返りまた歩き出す
誰かが腕をつかんだようで
いつもそうして振り返りまた歩き出す

 

もしも触れれば跳ね飛ばされる
ぎりぎりのところに立っている
もしも触れれば跳ね飛ばされる
ぎりぎりのところに立っている