『七月の炭酸水』

うどんが好きな、場末人の生存と残像。

大好きな詩

わたしを束ねないで

              新川和江


わたしを束ねないで

あらせいとうの花のように

白い葱(ねぎ)のように

束ねないでください わたしは稲穂

秋 大地が胸を焦がす

見渡すかぎりの金色(こんじき)の稲穂


わたしを止めないで

標本箱の昆虫のように

高原からきた絵葉書のように

止めないでください わたしは羽撃(はばた)き

こやみなく空のひろさをかいさぐっている

目には見えないつばさの音


わたしを注(つ)がないで

日常性に薄められた牛乳のように

ぬるい酒のように

注がないでください わたしは海

夜 とほうもなく満ちてくる

苦い潮(うしお) ふちのない水


わたしを名付けないで

娘という名 妻という名

重々しい母という名でしつらえた座に

座りきりにさせないでください わたしは風

りんごの木と

泉のありかを知っている風


わたしを区切らないで

,(コンマ)や.(ピリオド)いくつかの段落

そしておしまいに「さようなら」があったりする手紙のようには

こまめにけりをつけないでください わたしは終りのない文章

川と同じに

はてしなく流れていく 拡がっていく 一行の詩

 

 

新川和江詩集 (ハルキ文庫)

新川和江詩集 (ハルキ文庫)

 

 

【九州の100冊】『幻化』 梅崎春生 死の淵に見た生の輝き

www.nishinippon.co.jp

 

俺が明治学院大学(母校)の一般教養ゼミ(ヘボン塾)の日本文学ゼミで

この梅崎春生『幻化』というテクストでゼミ論を書いた梅崎春生の優れた紹介と読解上の要約記事です。
もしよろしければ、ご一読あれ。

 

 

ソーシャルメディアの時代の(社会においての)メディア機能の変容

今は情報過多の時代で、メディアも(主にネット,SNS)もオプションが増えた。特にネットメディア系の独特の「特性」、もっといえば「負の危険性」、つまりふとしたことで炎上したり、極端な意見に流れやすい10年前,20年前とは全く違ってきている言論形成プロセスが社会の風潮に影響し、既成事実として積み上げられていく流れがあるということも(ここ何年かでの社会におけるメディアの機能の激変)あるかもしれんなと個人的に感じる今日この頃... 
上述のような社会のメディア機能の激変により、熟議的デモクラシーがますます希薄化し、ポピュリズムの大きな伸張に繋がっている情勢の要因の一つになっているような。
かつてハーバマスが刊行した本のタイトルである「公共性の構造転換」がまた新しい感じで進行中なのかも..

追記:ただ、この邦訳文献は大学時代に読んだが、翻訳が非常に読みにくい。しかも、ハードカバーで重いし、そういう意味でも読みにくい。だからどっかの編集者さんが気づいて、文庫で新訳刊行した方がいいと思う。

 

 

公共性の構造転換―市民社会の一カテゴリーについての探究

公共性の構造転換―市民社会の一カテゴリーについての探究

 

 

メディア・情報・消費社会 (社会学ベーシックス6)

メディア・情報・消費社会 (社会学ベーシックス6)

 

 

掘り出し物のレジュメ

過去のdocumentをFinderで明後日いたら、ニクラス・ルーマン(社会学者)の「社会システム理論」入門みたいな俺が作ったレジュメが出てきた。
どっか友達か後輩に頼まれて、素人ながらルーマンのレクチャーしたことがあったのだろうか。あんま覚えてなかったのでびっくりした。

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ーThe mayor of Stockholm says the city is still open for refugees.

www.facebook.com

 

すげえこのストックホルム市長。

やっぱり北欧の民主主義というか、「人を見捨てない」という思想がベースにきっちりあるからこのような素晴らしい事がちゃんと断固とした意志を伴った雰囲気でしっかり言えるんだろうね。

たとえテロ(普遍的に言い換えれば民主主義への脅威)があったとしても。

 

 

自閉症の僕が飛び跳ねる理由

おお、文庫化されていたとは!
俺は6年前ぐらいにハードカバーで読んだ気が..
とても良い本です。

自閉症の僕が跳びはねる理由 (角川文庫)

自閉症の僕が跳びはねる理由 (角川文庫)

 

 

関連してこの本もSFですが、

実際に自閉症の息子さんを持つ著者が書いた本なので

ちゃんとした障がいに対する理解に基づいた本。

こちらはSFと毛色は違いますが、とてもいい本です。

 

くらやみの速さはどれくらい (ハヤカワ文庫 SF ム 3-4)

くらやみの速さはどれくらい (ハヤカワ文庫 SF ム 3-4)

 

 

 

桜の森の満開の下

春は魔物なので、最近、首を吊って死のうかなと唐突に考えることがある。

そして、桜の森の満開の下の季節がやってくる。どうしても、桜を見ると、

その下には気を狂わせるような死のイメージがあるあの坂口安吾の『桜の森の満開の下』という作品のイメージが湧いて生と死は表裏一体なんだな。だから桜も輝いて見えるほどに息を詰まらせるほどうつくしい。

 

 

桜の森の満開の下・白痴 他十二篇 (岩波文庫)

桜の森の満開の下・白痴 他十二篇 (岩波文庫)