『七月の炭酸水』

うどんが好きな、場末人の生存と残像。

プラスチック・メトロ

数字と矢印と機械と沈黙の地下道を行く
同じところをぐるぐる回る男の横を通り過ぎ
口の中で異物を転がす


プラスチックをしゃぶり続ける
すれ違った女は壊れていた
化学物質の花の匂い
目の前を流れていく男女男男女男女
誰かいる たくさんいる 誰もいない

 

誰かが名前を叫んだようで
いつもそうして振り返りまた歩き出す
誰かが腕をつかんだようで
いつもそうして振り返りまた歩き出す

もしも触れれば跳ね飛ばされる
ぎりぎりのところに立っている
もしも触れれば跳ね飛ばされる
ぎりぎりのところに立っている

 

ーー「浪費せよ、消費せよ」 「金を、労力を、命を、時間を、情報を」

 

異議を唱える前にとりあえずの睡眠と食事
それでまたなんだか忘れちゃってまあいいか
上がっても上がっても地下道
矢印の果てには真っ黒い海
覗き込んで引き返す
どこかで道を間違えた

 

「どうしようもない」と聞こえたが誰の声かわからない
まだ流れていく男女男男女男女

 

誰かが名前を叫んだようで
いつもそうして振り返りまた歩き出す
誰かが腕をつかんだようで
いつもそうして振り返りまた歩き出す

 

もしも触れれば跳ね飛ばされる
ぎりぎりのところに立っている
もしも触れれば跳ね飛ばされる
ぎりぎりのところに立っている