『七月の炭酸水』

作家・アート系気質なのに、会社員な人の生存と残像。

遠藤周作「沈黙」

 

沈黙 (新潮文庫)

沈黙 (新潮文庫)

 

 

 

遠藤周作『沈黙』読了。
結論から申し上げよう。後半から畳み掛けるように、いい意味で期待を裏切るほど面白かった。
というと語弊があるかもしれないので、具体的には「どう」面白かったというと、2つある。

後半での苦難に喘ぐ信徒たちを黙って何もせず救わない「沈黙」を保つ神に対しての主人公の内的な対話。
主人公に棄教を促す他者たちとの信仰を巡る問答や議論もドストエフスキーの『カラ兄』にある「大審問官」の章のようでとても面白かった。

信仰を持つものたちの「独りよがりの虚栄心」(作中の先に棄教したフェレイラが主人公を誘惑的に諭した言葉)といった陥穽や人間としての弱さや信仰を持つ強さや優しさなどその他、信仰を巡る諸々を、主人公の生々しい葛藤や引き裂かれを心理描写を通して"抉り出す"読み応えのある素晴らしい読書体験だった。