我輩は猫である
読了。18,19歳の時以来の通読。
ユーモアたっぷりのドタバタコメディみたいだったが、ところどころに突き刺さるような人生へのアフォリズムやせかせか急き立てられるような近代化への深い懐疑、それに対する日本の消極的文化と自然を重んじる文化への登場人物の郷愁から、去私則天の思想の萌芽が読み取れるような深い読みができた。
最後半は個人主義に懐疑的な記述やいずれ近代人は自殺が増えるだの陰鬱な文明批判が目につき、猫もビールを飲んで酔っ払ったせいで、うっかり水瓶に落ちてしまう。出ようと足掻くが、自然に身を委ねて死んでゆき小説は終わる。
最後の水瓶に嵌り、猫が足掻くさまは近代化のあくせくの「鉄の檻」(M.ヴェーバー)をそのまま活写しているようで、姜尚中がヴェーバーと漱石を研究するところにたどり着くのは、必然的に至極もっともだなと感じいった。
やっぱり歳をとると丁寧に深く読めたよーな気もした。12年くらいぶり?