三島由紀夫『英霊の聲』・短編『復讐』について
閣僚・政治家の靖国参拝がいっつもこの時期とか、話題になるが一体なんなんだろうと思う。
政治家曰く、
英霊に感謝の意を捧げるとともに国のために殉じてくれてありがとうございます。不戦の誓いとともに(云々と)
要するに国家のために死んでくれてありがとう。これから平和頑張ります。
ということだが、仮に英霊が亡霊となって自分が皇国臣民として殉じた大日本帝國から戦後の日本国になり、価値観がヒックリかえったことに対して、天皇のため、御国のためとして動員された英霊たちがどう感じるだろうという想像力が欠如している。
そのことを今よりずっと前に問題にしたのが、よく右翼的皇国的作家であるとラベリングされがちな三島由紀夫だったのは興味深い。
彼は靖国に参拝していたかわからぬが、
『英霊の聲』や短編『復讐』(確か「ラディゲの死」所収)などで天皇に英霊たちが恨みや憎しみをもって復讐に来るというモチーフの小説があるのは、案外知られていない。