『七月の炭酸水』

うどんが好きな、場末人の生存と残像。

文学

翻訳について

Don't Be afraid. Be focused. Be determined. Be hopeful. これは今週のジャパンタイムズSTで紹介されていたミシェル・オバマの言葉だ。STの訳では、「恐れないで。集中して。決心して。希望を抱いて。」という訳だった。でも、元翻訳家として、自分の感性…

加藤典洋 高橋源一郎『吉本隆明がぼくたちに遺したもの』

吉本隆明がぼくたちに遺したもの 作者: 加藤典洋,高橋源一郎 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2013/05/10 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (9件) を見る 俺が明治学院いた時、加藤典洋さんまだ早稲田にいってなかったから、ちょっと授業に潜ったこ…

エロスの漫画家「山本直樹」について-ユリイカ 2018年9月臨時増刊号 総特集◎山本直樹

ユリイカ 2018年9月臨時増刊号 総特集◎山本直樹 ―『BLUE』『ありがとう』『ビリーバーズ』『レッド』から『分校の人たち』まで― 作者: 山本直樹,会田誠,とり・みき,江口寿史,内田春菊 出版社/メーカー: 青土社 発売日: 2018/08/29 メディア: ムック この商品…

「告白ニート」ーーあるいは「深海からの光」(スパンクル『深海』)

いたい いたい いたい いたい 閉じ込めた 想いが胸さす ああ、いたい いたい いたい いたい 話では、とどかないから 諦めた想いが 胸刺す 話では、とどかないから 諦めながら 恋してる 教室の真ん中には あなたの笑顔こぼれてる おはようさえも 言えなくて …

文学・小さき存在の声のほうへ ーー誤報:翁長雄志さん 「オキナワ 終わらぬ戦争(コレクション 戦争×文学)」

news.yahoo.co.jp 今日の新聞で翁長知事の訃報をみた。新聞を2誌、駅のキオスクで買って熟読した。(TheJapanTimesと朝日新聞) 最後まで闘い抜き、小さき者たちの歴史を代弁した人の存在のともしびが消えた。 平熱の戦争。 悲しみの雨の連鎖はいつ止まるのか…

花や何 ひとの涙のしずくに洗われて 咲きいづるかな

神谷美恵子『生きがいについて』 2018年5月 (100分 de 名著) 作者: 若松英輔 出版社/メーカー: NHK出版 発売日: 2018/04/25 メディア: ムック この商品を含むブログを見る 100分で名著。5月から始まるのは、『生きがいについて』この本は私にとって、すごく…

プラスチック・メトロ

数字と矢印と機械と沈黙の地下道を行く同じところをぐるぐる回る男の横を通り過ぎ口の中で異物を転がす プラスチックをしゃぶり続けるすれ違った女は壊れていた化学物質の花の匂い目の前を流れていく男女男男女男女誰かいる たくさんいる 誰もいない 誰かが…

訃報(作家 石牟礼道子さん)

www.asahi.com 作家の石牟礼道子さん亡くなったのか…さっき新聞読んでいて訃報を知った。個人的認識としては、すごい作家だけにショックだ。ご冥福を御祈り申しあげるとともに、また作品をゆっくり再読する機会をもちたい。最後まで水俣病に象徴されるような…

ベストセラーになっている漫画について

君たちはどう生きるか (岩波文庫) 作者: 吉野源三郎 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1982/11/16 メディア: 文庫 購入: 54人 クリック: 631回 この商品を含むブログ (159件) を見る この本を原作とした漫画が異例のベストセラーになっているとニュースで…

小さなエピソードや物語たちが折り重なり、重"奏"され全体をなしている盛者必衰、諸行無常の物語

平家物語 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集09) 作者: 古川日出男(翻訳), 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2016/12/08 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (7件) を見る 古川日出男 訳ver.現代に蘇った琵琶法師たちがバンドを組み、エレクトリック…

さいきんのどくしょ2

最近は、武田泰淳を読み返して改めて凄まじい作家だなと感じた。読んだのは、「誰を箱舟に残すか」「蝮のすえ」・「我が子キリスト」・「ゴジラのくる夜」どれも怪物的な文学。上記の中・短編はいずれも読んでいて面白いエンターテイメント性もあるが「神」…

吉野弘『夕焼け』「吉野弘詩集」所収 1971

「夕焼け」 いつものことだが電車は満員だった。そしていつものことだが若者と娘が腰をおろしとしよりが立っていた。うつむいていた娘が立ってとしよりに席をゆずった。そそくさととしよりが坐った。礼も言わずにとしよりは次の駅で降りた。 娘は坐った。別…

川上未映子「砂漠、名古屋、銀河、いかが」所収引用

思いだせない口から編まれる言葉のすきまにときおりあなたとわたしだけに光ってみせる光があるから、地味で相も変わらずでどうしようもないようなこの鮮やかな難局を、あなたもわたしも乗り越えることができると思うのです /川上未映子「砂漠、名古屋、銀河…

朝は詩人

風は長い着物を着て朝の通りを目覚めさせるぼくは朝と手をつなぎ夜まで眠ることにした 雨は遅れてやって来て村の祭りを中断させたオートハープを抱えた少女が駅で電車を待っている 君が歌うその歌は世界中の街角で朝になる君が歌うその歌の波紋をぼくはなが…

大好きな詩

わたしを束ねないで 新川和江 わたしを束ねないで あらせいとうの花のように 白い葱(ねぎ)のように 束ねないでください わたしは稲穂 秋 大地が胸を焦がす 見渡すかぎりの金色(こんじき)の稲穂 わたしを止めないで 標本箱の昆虫のように 高原からきた絵…

【九州の100冊】『幻化』 梅崎春生 死の淵に見た生の輝き

www.nishinippon.co.jp 俺が明治学院大学(母校)の一般教養ゼミ(ヘボン塾)の日本文学ゼミで この梅崎春生『幻化』というテクストでゼミ論を書いた梅崎春生の優れた紹介と読解上の要約記事です。もしよろしければ、ご一読あれ。

自閉症の僕が飛び跳ねる理由

おお、文庫化されていたとは!俺は6年前ぐらいにハードカバーで読んだ気が..とても良い本です。 自閉症の僕が跳びはねる理由 (角川文庫) 作者: 東田直樹 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版 発売日: 2016/06/18 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (…

桜の森の満開の下

春は魔物なので、最近、首を吊って死のうかなと唐突に考えることがある。 そして、桜の森の満開の下の季節がやってくる。どうしても、桜を見ると、 その下には気を狂わせるような死のイメージがある、あの坂口安吾の『桜の森の満開の下』という作品のイメー…

長田弘「立ちつくす」

朝の、空の、どこまでも、透明な、薄青い、ひろがりの、遠くまで、うっすらと、仄かに、血が、真っ白なガーゼに、滲んでひろがってゆくように、太陽の、赤い光が、滲んでゆく。一日が、はじまる。――ここに立ちつくす私たちを、世界が、愛してくれますように。

NHKカルチャーラジオ:文学の世界 大人のための宮澤賢治再入門

NHKカルチャーラジオ 文学の世界 大人のための宮沢賢治再入門―ほんとうの幸いを探して (NHKシリーズ) 作者: 山下聖美 出版社/メーカー: NHK出版 発売日: 2015/12/25 メディア: ムック この商品を含むブログを見る 毎回楽しみにしているカルチャーラジオがあ…

加藤典洋『戦後入門』をめぐって

加藤典洋さんは明治学院にいたこともあって、(国際学部の授業に潜ったこともあったっけ。ちなみにそのポストをついだのが高橋源一郎 現明治学院大教授 *もちろん筆者は明治学院大卒)僕に日本語と批評という営みを明瞭にものすごくシンプルに氷解させてく…

学問・教養と文芸批評

21か22歳の時のハナシ。「文芸批評」ということについて論を進める前に考えていた。結局、そんな物は堂々巡りであり、わかるはずもなかった。提出期限は過ぎたが、なんとか梅崎春生について書いた。ガッツのない親友の増田くんは諦めて後期のゼミに脱落…

おこがましいかもしれんが、翻訳に向いてる人の条件(私見です)

【翻訳をこれまでやっていて思ったこと】 翻訳って当たり前だけど難しい。唐突だが、翻訳ができるようになる条件や翻訳にはこういう人が向いてるかもなということを私見を挟んで書いてみる。 ・英語の読解力 これは言うまでもない。英文を見て単語を調べてそ…

「翻訳について」

翻訳って本当に難しいと痛感する。特に実際の翻訳の仕事をやってみて振り返ってみるとそれを痛感する。 俺は結構真面目で、(翻訳)仕事に対しては没入し、「神は細部に宿る」ということでディテールにもこだわって仕事をしたつもりだ。 しかし、やっぱり2…

『竹内好セレクション』から

「ドレイとして、主人にかわいがられるドレイは、自分が主人になると、自分の使っているドレイを酷使する、ということをいっております。ドレイという言葉を魯迅は、よく使います。それは社会関係での実際のドレイという階級をさすのではなく、対人関係での…

わたしが娼婦になったら(寺山修司『少女詩集』)

あたしが娼婦になったらいちばん最初のおきゃくはおかもとたろうだあたしが娼婦になったらあたしがいままで買い求めた本をみんな古本屋に売り払って、世界中で一番香りのよい石鹸を買おうあたしが娼婦になったら悲しみをいっぱい背負ってきた人には、翼をあ…

三島由紀夫『英霊の聲』・短編『復讐』について

閣僚・政治家の靖国参拝がいっつもこの時期とか、話題になるが一体なんなんだろうと思う。 政治家曰く、 英霊に感謝の意を捧げるとともに国のために殉じてくれてありがとうございます。不戦の誓いとともに(云々と) 要するに国家のために死んでくれてありが…

誰も戦争を教えてくれなくても、文学でなら追体験できる

文学をとおして戦争と人間を考える 作者: 彦坂諦 出版社/メーカー: れんが書房新社 発売日: 2014/11 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 私の好きな作家、町田康は「読書する」という体験はそれだけで日常〈いま〉を離れた世界を追体験する行為だ…