私の「光」で他者を照らし、そして守ること

 

事実、世の中はたくさんの悪意に満ちていると僕は思う。けれど、幸運や人の優しさも君のすぐそばにきっと隠れてるんじゃないだろうか。少なくとも、朝は誰にでも平等にやってくるから。そこで何を掴むかは君次第だ。

 

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僕らはいつでも少しの間違いで

蝕まれてゆく日々を どうすることもできずにいた

 

人より少しだけ運が悪いみたいだから 仕方がないねって 君はずぶ濡れで笑った

 

薄いまぶたに口づけをする 何も見えなくなればいい

口移しした溜息の味 僕らの夜に出口はなかった 僕らの夜に出口はなかった

 

眠りに着くように 何かを捨てるように 焼け付くように

そっと 君の明日が凍りつく

 

ただ生きていて これから何も信じられなくたっていい

そう願うように抱きしめるけど 僕の体じゃ溶かせなかった

 

薄いまぶたに口づけをする 何も見えなくなればいい

口移しした生きている味 僕らの夜に出口はなかった

 

ただ生きていて こんな世界に今更期待などしない 閉じ込められた果てに僕らは みんな壊して笑ってやるよ みんな失くして笑ってやるよ

 

大好きな詩

わたしを束ねないで

              新川和江


わたしを束ねないで

あらせいとうの花のように

白い葱(ねぎ)のように

束ねないでください わたしは稲穂

秋 大地が胸を焦がす

見渡すかぎりの金色(こんじき)の稲穂


わたしを止めないで

標本箱の昆虫のように

高原からきた絵葉書のように

止めないでください わたしは羽撃(はばた)き

こやみなく空のひろさをかいさぐっている

目には見えないつばさの音


わたしを注(つ)がないで

日常性に薄められた牛乳のように

ぬるい酒のように

注がないでください わたしは海

夜 とほうもなく満ちてくる

苦い潮(うしお) ふちのない水


わたしを名付けないで

娘という名 妻という名

重々しい母という名でしつらえた座に

座りきりにさせないでください わたしは風

りんごの木と

泉のありかを知っている風


わたしを区切らないで

,(コンマ)や.(ピリオド)いくつかの段落

そしておしまいに「さようなら」があったりする手紙のようには

こまめにけりをつけないでください わたしは終りのない文章

川と同じに

はてしなく流れていく 拡がっていく 一行の詩

 

 

新川和江詩集 (ハルキ文庫)

新川和江詩集 (ハルキ文庫)

 

 

「母性の宗教」

 

切支丹の里 (中公文庫)

切支丹の里 (中公文庫)

 

 

 

キリスト教文学というか、隠れキリシタンキリスト教を切り口に
人間心理に対する哲学的とも言える「問い」とそれに対する〈弱き者〉の心情から人間を考察・探求してゆく遠藤周作の『思索』こそが遠藤の文学なんだと感じた。

ーー踏跡で黒ずんだ一枚の踏絵を見た感動から、基督教禁止時代の殉教者よりも、棄教した宣教師や切支丹の心情に強く惹かれた著者。島原などの隠れ切支丹の里を訪ね歩き、基督教が日本の風土と歴史の中で変貌していく様を真摯な取材と文献の中から考察する。名作『沈黙』を貫く著者独自の思想がうかがえる紀行・作品集。
(背表紙解題より)

私の感受性くらい....

欲の深い人は浅ましい。と私の感受性は感じる。
高層ビルのてっぺんかなんかでディナーといって、フェイスブックにあげる人などいるけど俺はそういう人種とは付き合えない。
羨望ではない。
シリア難民や世界中でも苦しんでいる人がいるし、日本でもいまだに東北や熊本で苦しんでいるひともいる。
そのことを考えると、たとえタワーのてっぺんでで超高級ディナーを喰っても罪悪感からちっとも俺はうまく感じないだろう。それならおれは困っている人への炊き出しの方が百万倍うまく感じるし、大事な人のためにつくる手料理の温もりの方がどんなにうつくしいことだろう。
思いやりの気持ちや優しい気持ちは目に見えない。
ほんとに人間の感性はさまざまだ。
だが、おれはそういう感受性をもちながら存在している。
それは分かり合えない悲しみも生むことだ。わざわざビルのてっぺんで高級なディナーを食べる人々はそれ相応の感受性と存在の仕方をしている。
俺の感受性とそのような感受性どっちがいい悪いはない。
しかし、分かり合えないということが悲しい。
いつから私たちはバラバラになったり、分断されたり、水を分けあえることもなくなってしまったんだろう…

遠藤周作「沈黙」

 

沈黙 (新潮文庫)

沈黙 (新潮文庫)

 

 

 

遠藤周作『沈黙』読了。
結論から申し上げよう。後半から畳み掛けるように、いい意味で期待を裏切るほど面白かった。
というと語弊があるかもしれないので、具体的には「どう」面白かったというと、2つある。

後半での苦難に喘ぐ信徒たちを黙って何もせず救わない「沈黙」を保つ神に対しての主人公の内的な対話。
主人公に棄教を促す他者たちとの信仰を巡る問答や議論もドストエフスキーの『カラ兄』にある「大審問官」の章のようでとても面白かった。

信仰を持つものたちの「独りよがりの虚栄心」(作中の先に棄教したフェレイラが主人公を誘惑的に諭した言葉)といった陥穽や人間としての弱さや信仰を持つ強さや優しさなどその他、信仰を巡る諸々を、主人公の生々しい葛藤や引き裂かれを心理描写を通して"抉り出す"読み応えのある素晴らしい読書体験だった。

AV出演を強要された彼女たち(ちくま新書)

 

AV出演を強要された彼女たち (ちくま新書)

AV出演を強要された彼女たち (ちくま新書)

 

先日、北千住の書店で立ち読みのみで斜め読みした。
いろいろと中身自体も生々しく、読んで痛々しい印象をうけた。
年ごろの娘さんを持つご両親は娘さんを護るためには必読書である。むしろ中学、高校で性教育や性と社会(問題)について授業の一環として教えてもいいのでは?とも思った。
それから、AV女優になる女の子も確かに、最初は興味本位で騙されてしまったというところもある。(しかし、出演させようとする側はあとから悪辣な手段で脅し、騙し、AV出演を強要する環境に追い込むのだ)


それを足掛かりにして自己責任論に結びつけて、性搾取産業を正当化するひともいるだろう。しかし、助けて欲しいひとを擁護するために、私の意見として社会学的な視点から反論するならこうするなということも考えた。
長くなるので書かないけど。

 

それから、生命倫理的な視点からも幾らか懸念があるかもしれない。
それは本書でも触れられるAV撮影でのいわゆる”生中出し”についてだ。おそらくは経口避妊薬などで対処しているのだろうが、
本書では突っ込んでなかったのでわかりかねるけれど、それでも妊娠のリスクはゼロではないと思う。そのようなとき、

つまり妊娠に至った時に堕胎するとしたら倫理上まずくないのかという私の疑問がある。

私は女性の権利として中絶はやむを得ない事情があるなら常識として許される範囲内でなら権利を認めるべき立場だ。

 

いまの中絶を法律上正当化する論理は「経済条項」としてである。
言い換えれば未成年の妊娠や親が経済上、子を育てるのが困難な状況を予定しているわけで、それに鑑みると、生命倫理上問題があるのでは?規制をかけないでいいのか?と思った。

着床したら、それは生命として、ヒトになるのだから、見方によってはーーどこからがヒトとみなしうるのかはおくにしてもーーこれからヒトになりうる"一者性"(政治哲学者ハンナ・アレントの概念)のある人を”殺す”事でもある


簡単にいうとこのような経口避妊薬とその他技術を使っても、妊娠リスクのあるかもしれない生中出しで妊娠をしてしまった場合に産業上、職業上とはいえ中絶/堕胎を倫理的に正当化出来るのか?(法的には違法性阻却事由となりえてしまうのか?)という論点である。

 

私はこんなに女性の身体やいのちを愚弄するようなことは人間はしてはいけないと思うし、

最低でも、世間が黙認していること自体も悪にさえ感じる。

 

まあでも編集とかして擬似のものとかでやっているのかもしれないが、何も知らない素人からするとまずいのでは?と考えてしまう
もちろん、業界とつるんでる医者もいるから細かいとこまで実態はわからないが…
斜め読みでもそこまでいろいろと考えさせられた。

もちろん、暗澹たる意味で。

我輩は猫である

読了。18,19歳の時以来の通読。


ユーモアたっぷりのドタバタコメディみたいだったが、ところどころに突き刺さるような人生へのアフォリズムやせかせか急き立てられるような近代化への深い懐疑、それに対する日本の消極的文化と自然を重んじる文化への登場人物の郷愁から、去私則天の思想の萌芽が読み取れるような深い読みができた。

 

最後半は個人主義に懐疑的な記述やいずれ近代人は自殺が増えるだの陰鬱な文明批判が目につき、猫もビールを飲んで酔っ払ったせいで、うっかり水瓶に落ちてしまう。出ようと足掻くが、自然に身を委ねて死んでゆき小説は終わる。

 

最後の水瓶に嵌り、猫が足掻くさまは近代化のあくせくの「鉄の檻」(M.ヴェーバー)をそのまま活写しているようで、姜尚中ヴェーバー漱石を研究するところにたどり着くのは、必然的に至極もっともだなと感じいった。

 

やっぱり歳をとると丁寧に深く読めたよーな気もした。12年くらいぶり?

 

吾輩は猫である (新潮文庫)

吾輩は猫である (新潮文庫)

 

 

マックス・ウェーバーと近代 (岩波現代文庫)

マックス・ウェーバーと近代 (岩波現代文庫)

 

 

夏目漱石 (岩波新書)

夏目漱石 (岩波新書)